マンションでの防水工事は誰が負担する?管理組合と居住者の役割とは | 水防人

防水工事の基礎知識

マンションでの防水工事は誰が負担する?管理組合と居住者の役割とは

2025/07/11

マンションの屋上やバルコニー、共用廊下や外壁などの防水工事は、建物の資産価値と快適な暮らしを守るうえで欠かせません。しかし、「防水工事の費用は誰が負担するの?」「自分のバルコニーの防水は個人負担?」といった疑問を持つ方も多いのが現実です。

この記事では、マンションにおける防水工事の費用負担の原則や管理組合・居住者それぞれの役割、工事をスムーズに進めるためのポイントまで、専門的な視点から分かりやすく解説します。

マンションの「専有部分」と「共用部分」の違い

マンションは「区分所有法」という法律により、

・居住者が個人で所有・使用できる「専有部分」
・全居住者の共有財産である「共用部分」

に分かれています。

専有部分とは?

主に各住戸内の「室内空間」や「内装」「設備機器」などを指します。壁・天井・床の内側が目安となります。

共用部分とは?

エントランス、廊下、階段、外壁、屋上、基礎、ベランダ・バルコニー(専用使用権付きの場合も)、ルーフバルコニーなどが該当します。

各部位の分類と防水工事の対象

場所 区分 備考
屋上・外壁・共用廊下・ルーフバルコニー 共用部分 基本的に管理組合の負担
バルコニー・ベランダ 共用部分 専用使用権ありの場合、居住者の一定の管理責任も
室内(専有部分) 個人の持ち物 設備を含め個人負担

防水工事が必要な場所の多くは「共用部分」に該当します。

どの範囲がどちらに該当するかは、管理規約で細かく決められている場合も多いので必ず確認しましょう。

防水工事の費用負担

共用部分は管理組合(修繕積立金)負担

屋上、外壁、共用廊下など共用部分の防水工事は、管理組合が主体となり「修繕積立金」から費用を負担するのが原則です。これはマンション全体の資産価値と安全性を守るために、住民全員の共同出費として設定されています。

専有部分は個人(区分所有者)負担

一方、専有部分(たとえば各住戸の室内や内装部分)で生じた不具合や補修は、その住戸の所有者の自己負担となります。

修繕積立金と管理費の違い

修繕積立金 将来の大規模修繕や防水工事に備えて積み立てておく資金
管理費 清掃や日常管理、光熱費など”日常的な維持費用”に充てられる

管理規約・使用細則の重要性

マンションによって、負担範囲やルールの細部は異なります。

工事前には必ず管理規約や細則を確認し、不明点は管理会社や理事会に相談しましょう。

具体例で解説!どこまでが管理組合、どこからが居住者?

屋上・ルーフバルコニー

【屋上全体の防水工事】

マンションの屋上は典型的な「共用部分」にあたり、そこに施工される防水工事は原則として管理組合の負担となります。

屋上防水は建物全体の雨漏りを防ぎ、下階の住戸や共用施設を守る役割があるため、修繕積立金を使い、全体の計画として管理組合が主導して行うものです。

【ルーフバルコニー(専用使用権付き)の場合】

ルーフバルコニーは「共用部分」ですが、一部の住戸だけが“専用使用”できる権利が付いていることが多く、この場合でも防水層自体の修繕は管理組合負担です。

ただし、専用使用権を持つ住戸の居住者がバルコニー内に設置した物干し台・プランター・ウッドデッキ・収納庫などの私物の撤去や移動は個人の責任となります。工事の際、業者が作業できるようにバルコニー内を片付ける必要がありますし、工事中に私物が破損した場合も、原則として居住者負担です。

ポイント

・管理組合は建物全体の防水性能維持のため、防水層自体の工事責任を持つ
・専用使用権の範囲内で設置した物品等の管理・撤去は、居住者自身で行う必要がある
・万一、私物がバルコニー床を損傷させた場合、その補修費用は個人負担となる場合が多い

共用廊下・共用階段・外壁

マンションの共用廊下・共用階段・外壁も、共用部分として法的に明確に位置付けられています。

ここに施される防水工事や塗装工事については、管理組合が計画し、修繕積立金から費用を出すのが原則です。

・大規模修繕工事の一環として、共用部分の外壁や廊下の防水・塗装を一斉に実施することが多い
・費用は全住民から集めた修繕積立金から支出し、居住者個人が追加費用を求められることは基本的にありません
・共用廊下や階段に私物を置いていても、原則として私物の管理や一時撤去は該当住戸の居住者の責任です

注意点

工事期間中、通行制限や立ち入り調整が必要になることがあるため、居住者の理解・協力も不可欠です。

各戸のバルコニー・ベランダ

バルコニー・ベランダは、法律上は共用部分になります。ただし、各住戸の居住者が”専用使用権”を持つケースが多いため、「誰がどこまでお手入れや修繕をするのか」がややわかりにくくなっています。日常のお掃除やゴミの片付け、物の管理は、専用使用者である居住者の役割です。例えば落ち葉やゴミの清掃、エアコン室外機や物干し竿の設置・管理などが含まれます。一方で、防水層そのものの傷みや修理は、建物全体の機能に関わる部分ですので、管理組合の計画・費用で行われるのが一般的です。ただし、ご自身でベランダ床にウッドデッキを敷いたり、植木鉢の水で床を傷めてしまったような場合は、それによって生じた損傷の修理費用はご自身の負担となることが多いです。

特に注意したいポイントとしては、居住者の不注意による損傷と自然な経年劣化の区別が難しく、費用負担で話し合いになりやすい傾向があります。そのため、マンションの管理規約や使用細則で「個人の責任範囲」を事前によく確認しておくことをお勧めします。

専有部分(室内)からの雨漏り

お部屋の天井や壁、窓枠などで雨漏りが見つかった場合、その「原因がどこにあるか」によって修理費用の負担者が変わってきます。共用部分(屋上・外壁・バルコニーの防水層など)の劣化が原因の場合は、管理組合の負担で修理が行われます。例えば屋上防水の劣化で上の階から水が漏れてきた場合や、外壁のひび割れから水が入ったケースなどが当てはまります。一方で、ご自身で行ったリフォームや配管工事、エアコン設置などが原因で雨漏りや水漏れが起きた場合は、その修理費用はご自身の負担となります。

実際の現場では雨漏りの原因を調べるのに時間がかかることも多く、「どちらの責任か」判断が難しいケースもあります。そういった場合は、管理組合と居住者の双方が専門業者による原因調査や第三者機関の意見を参考にしながら、冷静に話し合いを進めることが大切です。

防水工事の流れと管理組合・居住者の役割

計画立案と管理組合の責任

・長期修繕計画や大規模修繕の一環として防水工事を計画
・管理組合や理事会で工事の必要性を検討・決議
・必要に応じて住民説明会を実施し合意形成

調査・見積もり・業者選定

・建物診断・現場調査をもとに、複数社から見積もり取得
・業者の実績・保証内容・費用を比較検討
・理事会や総会での承認を経て業者決定

工事中の生活と住民の協力

・工事の周知(工事期間・範囲・注意点などの案内配布)
・ベランダや屋上の荷物片付けなど、居住者の協力が不可欠
・工事中の立ち入りや防犯対策、騒音対策なども事前確認

完成・アフターケア

・完工後は居住者と一緒に仕上がりチェック
・業者から保証書やメンテナンス説明を受ける
・管理組合はアフター対応や定期点検のスケジュール管理も大切

よくあるトラブル・失敗事例とその回避策

費用負担や範囲をめぐる住民トラブル

典型例

「自分のバルコニーは専用使用権があるから、補修費用も自分持ちだと思っていたら、実は管理組合負担だった」

「逆に自分の物で壊した部分まで管理組合で修繕してもらえないの?」

「費用の分担に納得がいかない」という住民同士の不信感や対立

回避策

事前に管理規約や使用細則を全員で丁寧に共有し、説明会や資料配布で合意形成を図ることが不可欠です。

管理組合が主導して「どこまでが共用部分なのか」「費用負担はどのように決まるか」などをわかりやすく明文化し、新しい住民にも周知徹底することが、トラブル予防の第一歩です。

工事中の騒音や作業員立ち入りトラブル

典型例

・工事中の騒音や振動で住民や近隣からクレーム
・共用廊下やバルコニーへの作業員立ち入りを巡るプライバシー・防犯上の不安
・工事期間や作業内容の連絡不足による混乱

回避策

工事スケジュールや内容、注意点を早めに全戸へ案内し、工事期間中も「いつ・どこで・どんな作業があるか」を随時共有しましょう。

管理組合は専用の連絡窓口を設け、住民からの質問や苦情に迅速に対応できる体制を作っておくと、トラブルの早期発見・解決につながります。

また、作業員の出入りがある日には「作業中」「立ち入り予定」などの掲示や、居住者への個別連絡も重要です。

保証やアフターサービスの問題

典型例

・工事後に不具合や再発が起きたが、どこに連絡すればよいか分からない
・保証内容が口頭説明だけで、書面に残っていなかった
・アフターサービスが十分でなく、再工事や追加費用が発生した

回避策

工事契約前に「保証書・アフターサービス体制」を必ず文書で確認し、工事完了後も「どこに連絡すればいいか」「担当窓口は誰か」を明確にしておきましょう。

保証の対象範囲や期間、アフター点検・メンテナンスの内容まできちんと書面で残すことで、万が一のときも安心して対応できます。

また、管理組合内で「アフター担当理事」や「問い合わせ専用窓口」を決めておくのも有効です。

管理規約・細則をチェックしよう

・どの範囲までが共用部で、どこからが専有部か
・修繕や工事の費用負担のルールが明確か
・専用使用権のバルコニー等の細かな規定
・万一トラブルや変更があった際の対応フロー

実際の規約や細則をあらためて読み直すことが、トラブル予防の第一歩です。

まとめ

マンションの防水工事を成功させるためには、「どこまでが管理組合の負担で、どこからが居住者の責任なのか」を正確に理解し、お互いに協力し合いながら進めていくことが欠かせません

日ごろからマンション規約や使用細則を確認し、あいまいな点は理事会や管理会社に相談しましょう。

また、工事を行う際には住民同士で十分に話し合いを重ね、合意形成を大切にしてください。信頼できる実績豊富な業者を選び、工事内容や保証についても納得できるまで確認することが重要です。

これらの基本を押さえておけば、思わぬトラブルや不要な出費を未然に防ぐことができ、マンション全体の資産価値も長く守っていくことができるでしょう。

困ったときは、専門家や第三者機関、そして【水防人】を活用し、安心できる防水工事を実現しましょう。


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