防水工事とは?必要性や工事の流れについて解説
2024/06/27
防水工事は、建物を雨水や湿気から守るための重要なプロセスです。特に日本のように式があり、降雨量が多い国では適切な防水対策が欠かせません。
今回の記事では、防水工事の基本的な概要や必要性、具体的な工事の流れまでを詳しく解説していきます。
建物の防水工事に関する疑問や不安がある方や、防水工事を検討している方、既存の建物に防水対策を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
防水工事は建物を水から守る工事
防水工事は、建物の屋上や屋根、ベランダ、バスコニーなど、雨にさらされる部分を雨水から守るための工事です。
一般的に、コンクリートでできた建物に施工され、コンクリートの躯体を雨風から守り、建物の延ばすことを目的として行われます。
一口に防水工事といっても、さまざまな工法が存在します。防水の状況や周辺環境、工事日程などを基に適切な工法を選ぶことが重要です。
次の章では、防水工事の必要性について具体的にご紹介していきます。
防水工事の必要性
防水工事は、建物を水漏れや湿気、カビなどから保護し、建物の構造や美観を長期に渡って維持することを目的として行われます。
適切な防水工事が施されていない建物は、雨水が内部に浸透することで、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
・雨漏り
・木材の腐食、鉄のサビ、建材の劣化
・カビの発生による健康上のリスク
順番に見ていきましょう
木材の腐食、鉄のサビ、建材の劣化
防水工事が施されていないと、雨水が建物内部に侵入し、木材の腐食や鉄のサビ、建材の劣化が起こりやすくなります。
こうした劣化は建物の強度低下につながるため、災害時に倒壊するリスクが高まりとても危険です。
建物の強度を維持するためにも、防水工事はなくてはならない施工の一つです。
雨漏り
防水工事をしないと雨漏りが発生しやすくなります。
雨漏りは屋根の下地など、生活していて気づかない部分から始まり、徐々に建物内部へと広がっていきます。
その結果、気づいた時には深刻化しているケースが少なくありません。
また、雨漏りが発生すると、建物への影響だけでなく家財の破損にもつながります。家電や家具までダメージを受けてしまうと、建物の大規模な改修工事だけでなく、家財の買い替えも必要となり、費用も大きくなってしまいます。
カビの発生による健康上のリスク
防水工事を行わないことで起こり得るリスクは建物にとどまりません。
防水工事が施されていないことで雨漏りが生じると、建物内にカビが繁殖しやすくなります。
その結果、住人は喘息や蕁麻疹などのアレルギー症状が出たり、すでにアレルギーをお持ちの場合は症状が悪化する恐れがあります。
カビはアレルゲンの中でも代表的なものの一つです。また、目に見えない場所にカビが発生していると、なかなか気づくことができず、症状が深刻になる可能性があります。
こうした健康上のリスクを防ぐためにも、防水工事は欠かせないといえるでしょう。
防水工事の種類
建物を長持ちさせ住人の健康上のリスクを防ぐためにも必要な防水工事ですが、防水工事には大きく分けて以下のような4つの種類があります。
・アスファルト防水工事
・ウレタン防水工事
・塩ビシート防水工事
・FRP防水工事
それぞれの特徴について、ご紹介します。
アスファルト防水工事
防水工事の中でも最も古い防水工法で、信頼性が高いといわれています。
以前は、アスファルトを高温で溶かしたものを流し固める「熱工法」が主流でしたが、現在は熱工法の他にも「トーチ法」や「常温工法」など、さまざまに改良された工法があり、施工場所に合わせて適切な工法を用いて施工します。
ウレタン防水工事
ウレタン樹脂を化学反応で硬化させ、防水層を作る工法です。施工はペンキのように塗布していきますが、防水機能を十分に発揮するためには、厚みを出す必要があります。
ウレタン防水工事はさまざまな形状やサイズに適用できるため広く利用されていますが、他の方法よりも耐久性が低いという欠点もあります。一般的に屋根やベランダ、バルコニーなど、日常的に歩行する場所で使用されています。
塩ビシート防水工事
塩化ビニルで作られた防水シートを貼って施工する工法です。すでに防水機能が完成しているシートを貼るため、防水機能や品質が安定しています。
ただし、成型された状態で出荷されるため、形状が複雑な場所への施工は困難です。そのため、形や幅が決まっているため、共用廊下や階段などの施工に利用されることが多いです。
FRP防水工事
ガラス繊維などで強化されたプラスチックによる防水工法です。硬くて軽いといった特性を持っているため、お風呂や船などにも利用され、信頼性の高い工法といえるでしょう。
一般的には、ベランダやバルコニーなどの防水工事に利用されることが多い工法です。
なお、それぞれの工法についてくわしくはこちらの記事でもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
防水工事の流れ
ここからは、防水工事のやり方や流れを種類別にご紹介していきます。
アスファルト防水工事
アスファルト防水工事には、「熱工法」「トーチ工法」「冷工法」の3つの工法があります。それぞれの流れは以下の通りです。
【熱工法】
①下地掃除
下地の汚れやごみを取り除きます。
②下地処理
不陸調整などの下地処理を行います。
③改修用ドレン設置
改修用のドレンを設置します。
④プライマー(接着剤)塗布
下地が乾燥したら、刷毛を用いてプライマーを塗布します。
⑤パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分にアスファルトルーフィングシートを貼り付けます。
⑥アスファルトルーフィングシート貼り付け
アスファルトルーフィングシートに溶融したアスファルトを流しながら貼り合わせます。
なお、角やコーナーについては強度を高めるために増し貼りを行います。
⑦アスファルト塗り
溶融したアスファルトをシートに塗り付けます。
⑧完成
8日から12日ほどで完成します。
【トーチ工法】
①下地掃除
下地の汚れやごみを取り除きます。
②下地処理
不陸調整などの下地処理を行います。
③改修用ドレン設置
改修用のドレンを設置します。
④プライマー(接着剤)塗布
下地が乾燥したら、刷毛を用いてプライマーを塗布します。
⑤パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分にアスファルトルーフィングシートを貼り付けます。
⑥アスファルトルーフィングシート貼り付け
アスファルトルーフィングシートに溶融したアスファルトを流しながら貼り合わせます。
なお、角やコーナーについては強度を高めるために増し貼りを行います。
⑦トップコートの塗布
防水層を紫外線や雨風から守るため、トップコートを塗布します。
⑧完成
7日から10日ほどで完成します。
【常温工法】
①下地掃除
下地の汚れやごみを取り除きます。
②下地処理
不陸調整などの下地処理を行います。
③改修用ドレン設置
改修用のドレンを設置します。
④プライマー(接着剤)塗布
下地が乾燥したら、刷毛を用いてプライマーを塗布します。
⑤パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分にアスファルトルーフィングシートを貼り付けます。
⑥改質アスファルトシート貼り付け
自着層を剥がして下地に貼り付けます。
※自着層は、剥離紙を剥がすことで下地に密着させるものです。
⑦シートの繋ぎ目にシール充填
シートの貼り合わせ部分にシール材を用いて充填します。
⑧トップコートの塗布
防水層を紫外線や雨風から守るため、トップコートを塗布します。
⑨完成
5日から7日ほどで完成します。
ウレタン防水工事
続いてウレタン防水工事の流れです。
ウレタン防水工事には、「密着工法」「メッシュ工法」「通気緩衝工法」の3つの工法があります。順番にご紹介します。
【密着工法】
①高圧洗浄
高圧洗浄機を用いて、高圧の水を噴射し下地表面の汚れやほこりを取り除きます。
②ケレン・清掃
ケレンを用いて下地に残ったゴミや不要な防水層などを撤去します。
③下地処理
下地のひび割れやクラックなどの補修を行い、凹凸がある場合は平らになるよう処理します。
④改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
⑤プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材を密着させることを目的として、プライマーを塗布します。
⑥パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペット立ち上がり部分にウレタン防水作業を行います。入隅部分は漏水リスクが高いため、慎重な作業が重要です。
⑦ウレタン塗膜下塗り
一層目のウレタン塗膜を適正な厚さで塗布します。
⑧ウレタン塗膜中塗り
二層目のウレタン塗膜を塗布します。
⑨トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐ目的で、保護塗料を塗布します。
⑩完成
3日から5日ほどで完成します。
【メッシュ工法】
①高圧洗浄
高圧洗浄機を用いて、高圧の水を噴射し下地表面の汚れやほこりを取り除きます。
②ケレン・清掃
ケレンを用いて下地に残ったゴミや不要な防水層などを撤去します。
③下地処理
下地のひび割れやクラックなどの補修を行い、凹凸がある場合は平らになるよう処理します。
④改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
⑤プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材を密着させることを目的として、プライマーを塗布します。
⑥メッシュシート貼り付け
ウレタン塗膜を塗布す場所に、メッシュシートを貼り付けます。
⑦パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペット立ち上がり部分にウレタン防水作業を行います。入隅部分は漏水リスクが高いため、慎重な作業が重要です。
⑧ウレタン塗膜下塗り
一層目のウレタン塗膜を適正な厚さで塗布します。
⑨ウレタン塗膜中塗り
二層目のウレタン塗膜を塗布します。
⑩トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐ目的で、保護塗料を塗布します。
11完成
3日から5日ほどで完成します。
【通気緩衝法】
①高圧洗浄
高圧洗浄機を用いて、高圧の水を噴射し下地表面の汚れやほこりを取り除きます。
②ケレン・清掃
ケレンを用いて下地に残ったゴミや不要な防水層などを撤去します。
③下地処理
下地のひび割れやクラックなどの補修を行い、凹凸がある場合は平らになるよう処理します。
④プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材を密着させることを目的として、プライマーを塗布します。
⑤通気緩衝シート貼り付け
下地に含んだ雨水や水分を逃がすためのシートをローラーで転圧し、貼り付けます。
⑥ジョイントテープ貼り付け
シートの繋ぎ目をなくすために、ジョイント部分にテープを貼り付けます。
⑦改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
⑧脱気筒の取り付け
下地に含んだ水分を、通気緩衝シートを介して外に排出させるため、脱気筒を取り付けます。
⑨パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペット立ち上がり部分にウレタン防水作業を行います。入隅部分は漏水リスクが高いため、慎重な作業が重要です。
⑩ウレタン防水一層目塗布
一層目のウレタン塗膜を適正な厚さで塗布します。
11ウレタン防水二層目の塗布
二層目のウレタン塗膜を塗布していきます。
12トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐ目的で、保護塗料を塗布します。
13完成
5日から7日ほどで完成します。
塩ビシート防水工事
続いて、塩ビシート防水工事の流れをご紹介します。
塩ビシートの防水工事には「密着工法」と「機械固定工法」があります。順番に見ていきましょう。
【密着工法】
①高圧洗浄
高圧洗浄機を用いて、ごみや砂、ホコリなどを除去します。
②下地処理
凹凸がある場合は平らに整えます。
③改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
④プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材を密着させることを目的として、プライマーを塗布します。
⑤シートの貼り付け
シートにシワや空気が入らないよう、ローラーを用いてしっかり転圧しながら貼り付けます。
⑥シートの接合
溶剤融着又は熱融着でシートの接合部分を溶かして接着接合します。
⑦接合末端部にシール貼り付け
シール材を使ってシートの繋ぎ目を保護します。
⑧パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペット立ち上がりと上端部へシートを貼り付けと笠木の新設を行います。
⑨完成
4日から7日ほどで完成します。
【機械固定工法】
①下地処理と確認
大きな凸凹がある場合は平らになるよう補修後、樹脂アンカーやビスの引き抜き試験を行い下地の強度を核にします。
②絶縁用シートを敷く
絶縁用シートをシワやよれのないよう敷き詰め、ジョイント部はテープで貼り付けます。
③固定金具の取り付け
シートの割付や風荷重を考慮し、固定金具を取り付けます。
※この作業では下地コンクリートにドリルで穴を空けるため、大きな音がします。
④改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
シート貼り付け
シートの歪みやたるみが出ないよう、シートを固定金具に熱溶着または溶剤溶着します。
⑤シートの接合
40mm以上の接合幅で熱溶着または溶剤溶着を行います。
⑥接合末端部にシール貼り付け
シール材を使ってシートの繋ぎ目を保護します。
⑦脱気筒の取り付け
下地に含んだ水分を、通気緩衝シートを介して外に排出させるため、脱気筒を取り付けます。
※シートによっては、脱気筒が不要なケースもあります。
⑧パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペット立ち上がりと上端部へシートを貼り付けと笠木の新設を行います。
⑨完成
5日から8日ほどで完成します。
FRP防水工事
最後に、FRP防水工事の流れをご紹介します。
①高圧洗浄
高圧洗浄機を用いて、高圧の水を噴射し下地表面の汚れやほこりを取り除きます。
②ケレン・清掃
ケレンを用いて下地に残ったゴミや不要な防水層などを撤去します。
③下地処理
下地のひび割れやクラックなどの補修を行い、凹凸がある場合は平らになるよう処理します。
④「改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集めて樋へ流します。
⑤プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材を密着させることを目的として、プライマーを塗布します。
⑥ガラスマット貼り、一層目の樹脂塗布
FRP防水用のガラスマットを貼り付け、FRP樹脂を塗布して密着させます。
⑦中塗り(二層目)
余分なFRPガラスマットを削り落とした後、中塗りを実施します。
⑧トップコート塗布
FRP防水の劣化を防ぐ目的で、保護塗料を塗布します。
⑨完成
2日から3日ほどで完成します。
信頼できる防水工事業者選びの5つのポイント
ここまで、防水工事の必要性や工事の流れについて解説してきましたが、最後に信頼できる防水工事事業者を選ぶポイントを5つご紹介します。
1.防水施工技能士の資格を保有している
防水施工技能士は、建物の防水工事に関する知識や技術を持つ専門家です。
防水工事はこの資格を有する業者に依頼すると安心です。
2.契約を急かさない
優良業者は、工事内容や費用など、十分に納得したうえで契約することを尊重しますので、契約を急かすことはありません。
契約を急かす業者には依頼しないことが得策です。
3.保証がメーカーと連名している
防水工事業者を選ぶ際には、保証がメーカーと連名しているか確認しましょう。
万が一、製品が既定の性能を満たさないなど不具合が生じた場合でも、連名の保証であれば修理や交換が保証されます。
4.安全対策がしっかりしている
防水工事は高所作業や化学物質の取り扱いなど、リスクを伴う作業が多いです。
また、作業中の事故が起こると、工事の遅延や追加費用が発生する可能性もあります。
そのため、こうしたトラブルを防ぐ意味でも適切な安全対策を取っている業者を選ぶことをおすすめします。
5.担当者が工事内容を理解している
防水工事では、高い知識と技術が必要です。そのため、担当者が工事内容を理解していない場合、工事の品質に影響を及ぼす可能性があります。また、要望に沿わない施工を行う恐れもあるでしょう。
防水工事業者選びでは、担当者がしっかりと工事内容を理解できているか否かも重要なポイントの一つとなります。
まとめ
防水工事は建物の寿命を延ばすとともに、住人の健康上のリスクを防ぐためにも重要な工事です。
また、防水工事には高い知識と技術が必要であるため、優良業者に依頼することも重要となります。
水防人では、全国47都道府県の防水職人スペシャリストを紹介しています。防水工事を検討されている方や、優良業者に防水工事を依頼されたい方は、ぜひ水防人へご相談ください。