既存の防水層を活かす「重ね防水」とは?メリット・デメリットを解説
2025/10/07
屋上やベランダの防水リフォームを考えていると「重ね防水」という言葉を耳にする方も多いでしょう。しかし、実際どんな工法なのか、従来の撤去工法とどう違うのか、注意点は何なのか…分かりにくい部分もたくさんあります。
本記事では「重ね防水」の基礎知識、メリット・デメリット、適した建物や費用相場、業者選びのポイントまで詳しく解説します。ご自宅やマンションの防水工事で失敗したくない方はぜひご一読ください。
重ね防水とは?

基本的な仕組みと特徴
重ね防水は、既存の防水層を撤去せず、その上から新しい防水層を施工する工法です。「かぶせ工法」とも呼ばれ、屋上やベランダ、陸屋根など広い範囲に多く使われています。撤去を伴わないため工期が短縮でき、コストも抑えやすいことが特徴です。
既存層があることで、万一の雨漏り時にも二重の防御となり安心感も高まります。
主な対応防水工法
重ね防水は、ウレタン防水、塩ビシート防水、FRP防水など、さまざまな工法に対応しています。ただし、既存防水層の種類や劣化状況によっては適用できないケースもあるため、現地調査でしっかり確認が必要です。
重ね防水のメリット

廃材撤去不要で工期・コストを圧縮できる
重ね防水は、既存の防水層をすべて撤去する「撤去改修工法」と比べて、圧倒的に廃材の発生量が少なく、処分費や手間がかからないのが大きな特徴です。撤去作業そのものが不要なため、廃材の運搬・処理にかかる費用も発生しません。
これによって全体の工期も短縮でき、「できるだけ早く防水工事を終えたい」「居住者やテナントの営業を止めたくない」といったニーズにも応えやすくなります。建物の利用者や近隣住民への負担も最小限に抑えられるため、マンションや商業施設でもよく採用されています。
屋内への雨水浸入リスクが減る
撤去工法では、既存の防水層を一旦すべて剥がしてしまうため、一時的に下地がむき出しになり、急な雨や天候の変化による雨水浸入リスクが高まります。
一方、重ね防水なら、常に既存防水層が残っている状態で新しい防水層を重ねるため、工事期間中に建物内部に水が入り込むリスクを大幅に減らすことができます。「梅雨時期や台風シーズンなど、天候が不安定な時期の施工でも安心感がある」と多くの施主様が実感されています。
防水層が二重になることで安心感が増す
重ね防水では、新しい防水層+既存の防水層という“二重構造”になります。万が一、新しい層に微細な破損や施工不良があった場合でも、下の既存層が雨水を防いでくれる「バックアップ効果」が期待でき、万全を期したい場合に非常に頼れる工法です。
実際、管理組合やビルオーナーからは「長期間安心して任せられる」「不具合時のダメージを最小限にできる」といった声が多く寄せられています。
騒音や粉塵が少ない
従来の撤去工法では、古い防水層の斫り作業や撤去時に大きな音や粉塵が発生しやすく、「日中も仕事や勉強に集中できない」「周囲に迷惑がかかる」といった悩みがつきものでした。
しかし、重ね防水なら騒音や振動が圧倒的に少なく、粉塵の発生もほとんどありません。そのため、生活環境や店舗・オフィス環境を守りたい方、近隣への配慮が必要なマンションや公共施設でも高く評価されています。
重ね防水のデメリット・注意点

施工できないケースがある
重ね防水は非常に便利な工法ですが、「どんな状態の屋上やベランダにも必ず適用できる」わけではありません。既存の防水層が激しく劣化していたり、下地が腐食していたり、既に膨れや剥がれ、雨漏りが発生している場合、重ね防水をしても新しい層がうまく密着せず、短期間で不具合が再発するリスクが高まります。
このようなケースでは、まず劣化箇所や下地の補修、必要に応じて撤去・新規防水が推奨されます。現地調査と下地診断が“本当にできるかどうか”の分かれ目なのです。
何度も重ねることはできない
重ね防水は「一度だけ」の限定的な選択肢です。過去にすでに重ね防水を施していた場合や、これまで何度も重ね張りを繰り返している場合は、防水層が厚くなりすぎて排水や施工精度に悪影響を与えることがあります。
また、既存層と新層の密着不良や、全体重量増加による構造負担も考慮しなければなりません。基本的には1回だけを目安に、二度三度の重ね防水は避けるのが原則です。
下地の劣化を見逃すリスク
既存の防水層を残したまま工事を進めるため、「下地や構造体の劣化・腐食」に気付きにくい点もデメリットです。もしも既存層の下で木部や鉄部の腐食、コンクリートのクラックやカビが進行している場合、新しい層を重ねても根本的な解決にはなりません。工
事前には赤外線カメラや打診棒による徹底した調査・診断を必ず行いましょう。必要に応じて部分撤去や下地補修も加えることが、後悔しない重ね防水の大切なポイントです。
既存層との相性や密着性に注意
重ね防水は、新しい防水材と既存層の「相性」がとても重要です。
たとえば、ウレタン系とアスファルト系、FRPと塩ビシート系など、材質によっては密着性が悪かったり、プライマー(下地処理剤)との組み合わせを誤ると、早期剥がれや施工不良が起こりやすくなります。下地の清掃や下処理、材料選定、技術力の高い職人の判断が不可欠です。
施工業者の経験値や実績も、業者選びの大切な指標になるでしょう。
どんな建物・どんな状態に向いている?
重ね防水が有効なケース
定期的にメンテナンスされてきた屋上やベランダで、既存層の劣化が軽度な場合には重ね防水が適しています。コストや工期を重視したい方にもおすすめです。
適さないケース
既存層に広範囲の剥がれや膨れ、下地腐食が見られる場合や、過去に何度も重ね防水を行ってきた建物は、撤去や全面改修が必要になることもあります。
診断・見極めのポイント
現地調査の際は、赤外線カメラ・打診・散水試験などで下地状況を丁寧に診断してもらいましょう。写真や報告書で現状を可視化してもらうことも大切です。
重ね防水と「撤去・全面改修」の比較
撤去工法は、すべての旧防水層を剥がして新しく施工するため費用や工期はかかりますが、下地の状態を確実に確認し、根本的な修繕ができます。
重ね防水はコスト・工期面で有利ですが、下地の状態によっては適さない場合もあります。どちらが合うかはプロの意見を参考にしましょう。
費用相場と見積もり例

屋上やベランダの重ね防水の費用は、6,000~12,000円/㎡が目安です。撤去・全面改修の場合は、1.5~2倍程度の費用がかかることも。劣化状況や建物規模、追加補修の有無で費用は変動します。見積もり時は追加費用の発生条件やアフターサービスの内容も必ず確認してください。
工事の流れと注意点
工事前には現地調査・診断、見積もり・工法説明、日程調整を経て着工となります。施工は清掃・下地補修・プライマー塗布・防水層施工・トップコート仕上げの順で進みます。施工後は仕上がりや保証書の受け取り、今後のメンテナンス方法も確認しましょう。
まとめ
重ね防水は、既存の防水層を有効活用し、費用と工期を抑えながら建物の防水性能を回復できる優れた工法です。しかし、下地の状況によっては不向きな場合もあるため、必ずプロの現地診断とアドバイスを受けてください。
納得いく防水工事を実現するためにも、困ったときは【水防人】の無料相談・業者紹介サービスをぜひご活用ください。
よくある質問・Q&A
Q:何回まで重ねられる?
A:基本的に1回までが推奨です。2回以上重ねると耐久性や密着性が落ちます。
Q:保証はどうなる?
A:工事内容や業者によりますが、5~10年保証が一般的です。必ず保証書を確認してください。
Q:既存層が古くても大丈夫?
A:状態によります。浮きや剥がれがあれば下地補修や撤去が必要なことも。
Q:重ね防水と全面撤去、どちらが長持ち?
A:下地や建物の状況により異なります。診断と業者の提案内容を比較しましょう。
Q:補助金や助成金は使える?
A:自治体の住宅リフォーム助成制度などが活用できる場合があります。申請は着工前に必要です。詳細は【水防人】へご相談ください。