防水工事にはどんな種類がある?それぞれの特徴を解説
2024/06/27
建物を雨漏りや湿気から守るために行われる防水工事は、建物の耐久性を高め、快適な住環境を保つために欠かせない工事です。
防水工事には複数の種類があり、それぞれの特性や適用範囲は異なります。この記事では、代表的な防水工事の種類とその特徴についてご紹介します。
それぞれの費用につきましてもご紹介していきますので、建物の防水対策に関心のある方や、防水工事を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
防水工事の種類
防水工事にはいくつかの種類があります。まずは、以下の表をご覧ください。
防水工事の種類 | 工法 | 特徴 |
---|---|---|
アスファルト防水工事 | ・熱工法 ・トーチ工法 ・常温工法 |
最も古い防水工法で防水性能が高い |
ウレタン防水工事 | ・密着工法 ・メッシュ工法 ・通気緩衝工法 |
最も安価で施工場所を選ばない |
塩ビシート(シート)防水工事 | ・密着工法 ・機械固定工法 |
費用対策効果が最も優れている |
FRP防水工事 | ・FRP防水工法 | 軽量かつ強靭で施工期間が最も短い |
防水工事を行う際には、改修工事を行う場所の現在の状況、周辺の環境、工事の日程などを考慮して、適切な工法を選択します。
次の章では、それぞれの工法の特徴についてご紹介していきます。
アスファルト防水工事
アスファルト防水工事は、加熱して溶解したアスファルトと専用の防水シートを用いて、層を重ねて施工する方法です。この方法は、防水工事の中でも最も古くから行われており、実績の多い防水工法です。
アスファルト防水工事には、「熱工法」「トーチ工法」「常温工法」という3つの方法がります。
それぞれの特徴について、見ていきましょう。
熱工法
熱工法は、アスファルトを200℃から270℃に加熱し、防水する場所に流し込んでから、防水シートを重ねる方法です。
この工法は日本で100年以上前から行われており、非常に信頼性の高い工法として知られています。アスファルトがすぐに固まるため、防水層の形成が容易であるという利点があります。
しかし、高温でアスファルトを溶かす工程では異臭や煙が発生するため、近隣への配慮が必要です。そのため、現在では他の工法が採用されることが増えています。
トーチ工法
トーチ工法は、改良されたアスファルトシート(改質アスファルトシート)を800℃から1000℃のトーチバーナーで炙りながら施工する方法です。この工法は現在の主流になりつつあります。
ただし、シートを完全に密着させるためには高度な技術が必要です。そのため、高い知識や技術を持つ業者に依頼することが重要です。
常温工法
常温工法は「冷工法」とも呼ばれ、熱を使わずにアスファルトを施工する方法です。この工法では、トーチ工法で使用する改質アスファルトシートの裏に粘着層をコーディングすることで、熱を利用せずに密着させます。
煙やにおいが出ないため、環境にも優しい工法です。しかし、シート同士のすき間を埋めるために他のアスファルト工法よりも多くのシートを重ねる必要があります。そのため、防水層の重量が増し、建物の耐久性を考慮しなくてはいけません。
煙やにおいが出にくいため、密集している住宅街で採用させることが多いです。
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事は、建物に雨水が侵入しないようポリウレタン樹脂を用いる塗膜タイプの工法です。
液状の樹脂を塗り重ねて化学反応させることで硬化し、建物の表面にしっかりと密着させます。
ウレタン防水工事の代表的な工法として、「密着工法」「メッシュ工法」「通気緩衝工法」があります。
それぞれの特徴について、ご紹介していきます。
密着工法
密着工法は、既存の防水層の状態が良好で、雨漏りしていない場合に採用されることが多い工法です。この方法では、下地と防水層の間にシートを貼らずに密着させます。
しかし、下地に雨水が含まれている場合は、防水層の膨れの原因になる可能性があります。
そのため、密着工法は防水層の状態が良好で、将来的な雨漏りを防ぎたい場合や、工事する部位が複雑な場合に選ばれます。また、前回の防水工事でウレタン通気緩衝工法が採用されている場合にも、密着工法が適しています。
メッシュ工法
メッシュ工法は、約10年前まではよく採用されていた方法です。しかし、近年ではメッシュ工法を実施しても雨漏りが改善されないため、平場での防水工事ではほとんど採用されなくなりました。
現在では、通気緩衝工法を実施する際に、立ち上がりにウレタンメッシュ工法を採用するケースが増えています。
立ち上がり部分は、縦横の幅が小さく通気緩衝シートを貼ることができません。そのため、通気緩衝シートの代用品としてメッシュシートを使用し、ウレタン塗膜の防水層を強化しています。これにより、通気緩衝シートが貼れない部分の雨漏り対策をすることができます。
ただし、立ち上がり部分が低い戸建てではあまり採用されていません。大型マンションなど立ち上がりの高さがある場所で採用されることが多いです。
通気緩衝工法
通気緩衝工法は、「ウレタン防水絶縁工法」とも呼ばれており、防水専門業者だけが提供できる工法です。
ウレタン防水の過程で屋上を塗装する必要があるため、塗装業者や工務店などからは自社でできると勘違いされがちですが、実際には高度な技術と高い知識が必要となるため、注意が必要です。
通気緩衝工法は現在、最も主流な防水工事の一つとなっており、特に雨漏りをしている建物の防水工事に適しています。
高い耐久性と優れた伸縮性を持っており、通気シートを挟み込み、脱気筒を設置することで防水層内部の蒸気を逃がし、防水シートの膨れを防ぐことができます。
さらに、液状のウレタンを使用するため、施工が難しい凹凸のある建物や屋上、階段、ベランダなど複雑な形状の場所での施工が容易です。
塩ビシート(シート)防水工事
塩ビシート(シート)防水工事は、屋上の下地にシートを一体化して敷くことで建物への雨水や湿気の侵入を防ぐことができる方法です。
塩ビシート(シート)防水工事には、全面が下地に密着する「密着工法」とシートと下地にすき間が生じることで通気性を確保できる「機械固定工法」があります。
通常、シートの厚みは1.5mmですが、2mmの高耐久仕様(遮熱仕様)にすることで、寿命やメンテナンス周期を長くすることができるのも特徴です。
「密着工法」と「機械固定工法」のどちらを選択しても、雨漏りに有効なため、施工場所や予算に応じて選択されることが多いです。
密着工法
密着工法は、塩化ビニール樹脂やゴムで作られた防水シートを接着剤などで貼り付ける方法です。いずれも単層防水のため、施工期間が短く低コストで施工できるのが特徴です。
塩化ビニール樹脂シートは、紫外線に対し優れた耐久性を持っており、軽歩行が可能なシートも存在します。
一方、ゴムシートは収縮性に優れており、地震などの揺れに強い素材です。ただし、鳥害による穴あきの心配があります。
いずれの場合も、密着工法は下地の撤去などが必要ないため、改修工事に適しています。しかし、通気性がないため、下地の影響を受けるリスクもあります。
機械固定工法
機械固定工法は、シート防水の優れた工法として知られています。
この方法では、入隅コーナー部や防水端末部にシート鋼板をドリルで固定し、その上に塩ビシートを接合します。これにより、躯体にシートを直接接合しないため、躯体の亀裂や振動、目地の挙動などの影響を受けることはほとんどありません。
さらに、下地の撤去が不要で、調整の必要もほとんどないため、改修工事に適しています。溶着材または熱風を用いて瞬時に接合するため、長期間安定した接合面を保つことができます。
機械固定工法は絶縁工法でもあるため、水蒸気が分散し、部分的な膨れが生じる心配もありません。
FRP防水工事
FRPは「繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)の略称で、FPR防水工事は、ガラス繊維を混ぜたプラスチック樹脂でできたシートを、木やコンクリートで作られた床の上に敷き、その上に樹脂を塗って硬化させる方法です。
FRPは、お風呂や宇宙ロケットなど、建物よりもはるかに防水性が求められる場所でも使用される素材です。そのため、水を通さない力は他の防水方法よりも高く、高い水密性を誇ります。
また、FRP防水工事が施された場所は固く丈夫な仕上がりになるため、耐荷重性や耐摩擦性にも優れています。さらに、他の防水層と比べて非常に軽量であるため、築年数が長い住宅のベランダや、荷重に弱い場所への施工にも適しています。
ただし、FRPには伸縮性が少ないという特性があるため、広い面積(10㎡以上)の木造の床面には施工できません。
防水工事の種類別費用相場
防水工事は種類によって施工費用も異なります。ここからは、防水工事の種類別の費用相場をご紹介していきます。まずは、以下をご覧ください。
防水工事の種類 | 費用相場 | 耐用年数 |
---|---|---|
アスファルト防水工事 | 約5,500円~8,000円 | 15年~25年 |
ウレタン防水工事 | 約4,000円~7,000円 | 8年~10年 |
塩ビシート(シート)防水工事 | 約5,000円~7,000円 | 10年~12年 |
FRP防水工事 | 約6,000円~8,000円 | 10年~15年 |
次に、防水工事の工法ごとにかかる費用相場をくわしくご紹介していきます。
アスファルト防水工事
アスファルト防水工事には「熱工法」「トーチ工法」「常温工法」の3つの工法があります。それぞれの費用相場は以下の通りです。
工法の種類 | 費用相場 |
---|---|
熱工法 | 約6,000円~8,000円/㎡ |
トーチ工法 | 約6,500円~8,000円/㎡ |
常温工法 | 約5,500円~7,500円/㎡ |
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事には「密着工法」「メッシュ工法」「通気緩衝工法」の3つの工法があります。それぞれの費用相場は以下の通りです。
工法の種類 | 費用相場 |
---|---|
密着工法 | 約4,000円~6,000円/㎡ |
メッシュ工法 | 約4,500円~6,500円/㎡ |
通気緩衝工法 | 約5,500円~7,000円/㎡ |
塩ビシート(シート)防水工事
塩ビシート(シート)防水工事には「密着工法」「機械固定工法」の2つの工法があります。それぞれの費用相場は以下の通りです。
工法の種類 | 費用相場 |
---|---|
密着工法 | 約4,000円~6,000円/㎡ |
機械固定工法 | 約5,500円~7,000円/㎡ |
FRP防水工事
FRP防水工事には工法は1つの方法のみになります。費用相場は以下の通りです。
工法の種類 | 費用相場 |
---|---|
FRP防水工事 | 約4,000円~7,500円/㎡ |
さらに、どの種類の防水工事においても、足場仮設や高圧洗浄、下地処理・補修費、発生材処分費、諸経費などが別途発生します。
これらの費用については、施工業者により大きく異なりますので、見積書の項目ごとに確認するとともに、複数の施工業者から相見積もりを取るなどして、慎重に検討することをおすすめします。
まとめ
一口に防水工事といっても、防水工事には複数の種類があり、それぞれの特性や適用範囲は異なります。
また、防水工事には高い知識と技術が必要であるため、優良業者に依頼することも重要です。
水防人では、全国47都道府県の防水職人スペシャリストを紹介しています。防水工事を検討されている方や、優良業者に防水工事を依頼されたい方は、ぜひ水防人へご相談ください。