アスファルト防水とはどんな工事？特徴やメリット・デメリットを解説
2024/10/21
アスファルト防水は、耐久性が高く、特に屋上や地下などの防水が重要な建物で多く採用されている工法です。
この記事では、アスファルト防水の基本的な特徴と、使用される工法についてくわしくご紹介します。
アスファルト工法のメリットやデメリットについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
アスファルト防水とは
アスファルト防水とは、液体状のアスファルトに合成繊維不織布を浸透させたルーフィングシートを複数層に重ねることで行う防水工事の一種です。
このシートを二層以上に重ねることで、水の浸入を防ぐ高い水密性が得られ、建物の防水性能を長期間にわたって維持することができるため、信頼性の高い工法として広く採用されています。
アスファルト防水の工法は、施工方法によって以下に挙げる3つに分かれます。それぞれの工法について、順番にご紹介します。
熱工法
熱工法は、アスファルトを220℃から270℃に加熱して溶かし、複数枚のルーフィングシートを積み重ねることで防水層を形成する工法です。
日本では100年以上前から採用されている歴史ある技術で、信頼性の高い工法として知られています。アスファルトが短時間で固まるため、防水層を効率的に施工でき、耐久性にも優れた防水層を作ることが可能です。
熱工法の大きな利点は、アスファルトがすぐに固まり、施工が比較的短時間で終わることです。また、複数の層を重ねるため、水密性が高く、耐久性に優れた防水層を形成できます。
ただし、高温のアスファルトを使用するため、溶融時に発生する異臭や煙が問題になる場合があり、火災リスクや近隣への配慮が必要です。また、アスファルトの重さが建物に負担をかけることもあります。最近では、このような課題を解決するために、環境に配慮した新しい工法が普及しつつあります。
トーチ工法
トーチ工法は、改良されたアスファルトシート（改質アスファルトシート）を高温のトーチバーナー（800〜1000℃）で炙りながら施工する防水工法です。
従来の熱工法に比べて作業効率が高く、特に改修工事や新築工事の現場で広く採用されている主流の工法です。この方法では、シートを炙りながら貼り付けるため、アスファルトの溶解とシート貼り付けの作業を同時に行うことができ、工期の短縮が可能です。
トーチ工法の最大の利点は、施工の効率が高いことです。熱工法のようにアスファルトを別に溶かす必要がなく、バーナーでシートを炙りながら直接貼り付けるため、時間とコストを削減できます。また、適切に施工されれば高い防水性能を発揮し、信頼性のある仕上がりが期待できます。
一方で、トーチ工法では施工業者の技術が求められます。シートを均一に加熱しながら貼り付けるには熟練の技術が必要で、密着度が不足すると防水性能が落ちる可能性があります。そのため、施工ミスが発生しないよう、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
常温工法
常温工法、または冷工法とは、アスファルトを溶かさずに施工する防水工法です。この方法では、改質アスファルトシートの裏に粘着層をコーティングし、熱を使用せずにシートを下地に密着させます。
シートを重ねて防水層を形成する点では他の工法と同様ですが、熱や火気を使わないため、施工中に煙や臭いが発生しないのが特徴です。
常温工法の大きなメリットは、煙や臭いが出にくく、環境に優しいことです。そのため、住宅が密集している地域や、騒音や臭いに敏感な場所での施工に適しています。また、火を使わないため、火災リスクが少なく、安全に施工が進められます。
一方で、熱を使わない分、他の工法よりも多くのシートを重ねて施工する必要があり、その分、防水層が重くなります。建物や屋上の耐久性に影響を与える可能性があるため、事前に構造的な確認が必要です。
アスファルト防水が適用される建物
アスファルト防水は、特に広い面積を持つ建物に適しており、学校や大型マンション、公営住宅、病院などの屋上や屋根でよく採用されています。
広範囲にわたって高い防水効果を発揮できるため、コンクリート造の建物との相性も良く、新築の大型施設や分譲マンションなどで多く使用されるのが特徴です。また、耐久性が高いため、長期間にわたって高い防水性能を維持できます。
アスファルト防水のメリット
ここからは、アスファルト防水のメリットについて工法別にご紹介していきます。
熱工法
熱工法は、130年以上の歴史を持つ信頼性の高い防水工法です。この長い実績に基づいた豊富なデータやノウハウがあり、耐久性や水密性にも優れています。
さらに、他の工法に比べて厚みが6～10ミリと最も分厚い防水層を形成できるため、耐久年数も17年以上と非常に長くなります。
【豊富なデータとノウハウ】
歴史が長く、多くの現場で実績があるため、安心して採用できる工法です。
【優れた水密性と耐久性】
厚い防水層が強力な防水性能を発揮し、長期的な耐久性を実現します。
トーチ工法
トーチ工法は、防水性と接着性が非常に高い工法であり、特にマンションや大型建物での実績が豊富です。シートを隙間なく溶着することができるため、優れた防水効果を発揮します。
【環境への配慮】
施工中に煙や臭いがほとんど出ないため、周辺環境への影響が少なく、安心して使用できます。
【改修工事にも適応】
既存のアスファルト防水の上に新しい層をかぶせることができ、効率的な改修が可能です。
【コストパフォーマンス】
比較的低コストで施工できるため、民間工事において広く採用されています。
常温工法
常温工法は、火を使用せずに施工するため、環境への配慮と安全性が優れた工法です。この工法は、広範囲を一度に施工できるため、工期の短縮が可能です。
【臭いが発生しない】
剥離紙をはがして接着するため、アスファルトが溶けたときの不快な臭いがなく、周囲に配慮した施工を行うことができます。
【安全性の高さ】
火を使用しないため、室外機などが設置されている場所でも焦げたり溶けたりする心配がなく、安心して施工できます。
【主流の工法】
近年、熱や臭いが発生しないことから、常温工法は最も主流な工法として多くの現場で採用されています。
アスファルト防水のデメリット
アスファルト防水には、さまざまなメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。工法別に見ていきましょう。
熱工法
熱工法は高い信頼性を持つ一方で、いくつかのデメリットもあります。
【小さい面積の建物には不向き】
広い面積の施工に適しているため、小規模な建物にはあまり向いていません。
【重量の問題】
アスファルトは非常に重く、施工後の防水層が建物に負荷をかける可能性があります。
【匂いや煙の発生】
220～270℃の高温でアスファルトを熱するため、独特の臭いや煙が発生し、周辺環境への配慮が求められます。また、火災のリスクもあるため、最近ではこの工法を採用する工事が減少しています。
さらに、大きな窯を設置するためのスペースが必要となるため、施工現場の条件も制約されることがあります。
トーチ工法
トーチ工法は効率的な施工方法ですが、いくつかのデメリットもあります。
【下地を痛めるリスク】
高温の火でシートを炙るため、下地を傷める可能性があります。
【煙や臭いが籠りやすい】
施工中に煙や臭いが発生しやすく、周囲に影響を与えることがあります。
【火気の使用による危険】
火を使用するため、周辺に燃えやすいものがある場合は施工ができず、室外機などがあると焦げたり溶けたりする危険があります。
【定期的なメンテナンスが必要】
トーチ工法で施工した防水層は、5～8年ごとにトップコートの塗布が必要で、メンテナンスの手間がかかります。
これらのデメリットを考慮すると、施工現場の条件や周囲の環境に注意が必要です。
常温工法
常温工法は環境に優しい工法ですが、いくつかのデメリットもあります。
【密着度の低下】
剥離紙をはがして接着するため、熱を使用する工法に比べて密着度が低くなることがあります。これにより、防水効果が劣る可能性があります。
【定期的なメンテナンスが必要】
施工後は5～8年ごとにトップコートを施す必要があり、メンテナンスの手間がかかります。
これらの点を考慮し、常温工法の適用を検討する際には、施工後の管理を意識することが重要です。
アスファルト防水工事の流れと工法別費用相場
最後に、アスファルト防水工事の流れと施工にかかる費用の相場を工法別にご紹介していきます。
熱工法
1.下地掃除
下地の汚れやゴミを取り除きます。
2.下地処理
不陸調整などの下地処理を行います。
3.改修用ドレン設置
改修用のドレンを設置します。
4.プライマー（接着剤）塗布
下地が乾燥したら、刷毛を用いてプライマーを塗布します。
5.パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分にアスファルトルーフィングシートを貼り付けます。
6.アスファルトルーフィングシート貼り付け
アスファルトルーフィングシートに溶融したアスファルトを流しながら貼り合わせます。角やコーナーについては強度を高めるために増し貼りを行います。
7.アスファルト塗り
溶融したアスファルトをシートに塗り付けます。
8.完成
工事完了までに8日から12日ほどかかります。
【費用相場】約6,000円～8,000円／㎡
トーチ工法
1.下地掃除
下地をきれいに清掃し、ゴミなどを取り除きます。
2.下地処理
不陸調整を行い、平らに整えます。
3.改修用ドレン設置
防水層にたまった雨水を排水するため、慎重に改修用ドレンを設置します。
4.プライマー（接着剤）塗布
下地が十分に乾燥した後、ローラー刷毛や手刷毛でプライマーを塗布します。
5.パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分にアスファルトルーフィングシートを貼り付けます。
6.アスファルトルーフィングシート貼り付け
トーチバーナーでシートの裏面と下地を炙り、アスファルトを溶解させて貼り合わせます。角やコーナーは強度を高めるために増し貼りを行います。
7.トップコートの塗布
防水層を紫外線や雨風から守るために、トップコートを塗布します。
8.完成
工事完了までに7日から10日ほどかかります。
【費用相場】約6,500円～8,000円／㎡
常温工法
1.下地掃除
下地に残ったゴミを取り除き、清掃します。
2.下地処理
勾配をなくして平らに整えます。
3.改修用ドレン設置
雨水を排出するための改修用ドレンを設置します。
4.プライマー（接着剤）塗布
下地が乾燥した後、シートの密着を高めるためにプライマーを塗布します。
5.パラペット立ち上がりにシート貼り付け
パラペットの立ち上がり部分に改質アスファルトシートを貼り付けます。
6.改質アスファルトシート貼り付け
自着層（剥離紙を剥がすことで下地に密着させる層）を剥がして下地に貼り付けます。
7.シートの繋ぎ目にシール充填
シートの貼り合わせ部分にシール材を充填します。
8.トップコートの塗布
防水層を紫外線や雨風から守るために、トップコートを塗布します。
9.完成
工事完了までに5日から7日ほどかかります。
【費用相場】約5,500円～7,500円／㎡
まとめ
アスファルト防水は、建物の長期的な保護に欠かせない重要な工事です。
放置すると防水層の劣化が進み、雨漏りや湿気による構造損傷のリスクが高まります。そのため、適切なタイミングで工事を行い、各工法の耐用年数や費用をしっかりと理解することが大切です。
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