ウレタン防水とはどんな工事?特徴やメリット・デメリットを解説
2024/10/21
ウレタン防水は、住宅や建物の防水工事において広く採用されている工法の一つです。
柔軟性と耐久性に優れたウレタン樹脂を使用し、軽量でありながら高い防水性能を発揮することが特徴です。ただし、すべての建物に適しているわけではないため、注意が必要です。
この記事では、ウレタン防水の基本的な特徴や工法についてくわしくご紹介します。さらに、ウレタン防水のメリットとデメリットについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
ウレタン防水とは
ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を床面に塗布し、乾燥後に防水膜を形成する工法です。
ウレタン防水の大きな特徴は、複雑な形状や細かい部分にも柔軟に対応でき、継ぎ目のないシームレスな仕上がりになる点です。また、ウレタン樹脂が固化して防水層を作るため、適用される範囲は広いです。
その一方で、耐用年数はやや短めで、定期的なメンテナンスが必要ですが、その施工の自由度の高さから広く採用されています。特に既存の下地の形状に関わらず対応できるため、他の防水工法では難しい場所にも施工が可能です。
ウレタン防水には以下に挙げる3つの工法があり、それぞれ特徴や耐用年数が異なります。
・密着工法
・メッシュ工法
・通気緩衝工法
順番にご紹介していきます。
密着工法
ウレタン防水の密着工法は、下地に直接ウレタン樹脂を塗布し、乾燥させることで防水層を形成するシンプルな工法です。既存の下地が比較的良好で、雨漏りの心配がない場合に多く採用されます。
コストが抑えられる点が最大のメリットで、最も採用率の高い工法です。しかし、下地に残った水分を逃がす仕組みがないため、蒸発によって防水層が膨れるリスクがあります。施工が容易で費用対効果も高いため、一般的な防水工事によく用いられます。
メッシュ工法
メッシュ工法は、ウレタン樹脂とともにガラス繊維などのメッシュシートを使用して施工する工法です。このメッシュシートにより、防水層の強度が高まり、ひび割れしにくくなります。
特に凹凸が多い部分や立ち上がり部分など、形状が複雑な箇所での使用が効果的です。密着工法に比べて耐久性が向上しますが、通気性がないため、湿気が残る場合には他の工法との併用が望ましい場合もあります。
通気緩衝工法
通気緩衝工法は、床面に「通気緩衝シート」を敷き、その上にウレタン樹脂を塗り重ねる工法です。このシートは下地に含まれる水分や湿気を外に逃がす役割を果たし、防水層の膨れや劣化を防ぎます。
特に雨漏りが発生している建物に適しており、長期間にわたり防水効果を維持します。密着工法やメッシュ工法に比べてコストは高くなりますが、湿気対策に優れ、安心して使用できる工法です。
ウレタン防水が適用される建物
ウレタン防水は、ビルやマンションなどの複雑な形状の建物にも適用できる優れた防水工法です。
施工する床の面積や形状に関係なく、屋上やベランダ、バルコニーなど多くの箇所に対応可能です。また、共用廊下や床部分、貯水槽周辺や室外機のある場所など、幅広い建物で使用されています。
施工が手軽で工期も短いため、さまざまな工事現場で採用されている人気の工法です。
ウレタン防水が不向きなケース
多くの箇所に対応できるウレタン防水ですが、不向きなケースとしてALC(軽量鉄骨)構造の建物が挙げられます。
ALCの建物は、地震などの揺れに対して耐震性を高めるために、揺れ幅を大きくして振動を吸収する構造を持っています。しかし、ウレタン防水は揺れに対する追従性が弱く、伸縮性が低いため、揺れによってウレタン塗膜層が伸びたり切れたりしやすく、ひび割れを起こす可能性があります。
そのため、ウレタン防水は雨漏りのリスクが高く、不向きとされています。ALC構造の建物には、追従性が高い塩ビシートが一般的に使用されています。
ウレタン防水のメリット
ここからは、ウレタン防水のメリットについてご紹介します。ウレタン防水のメリットとして、主に以下の7つが挙げられます。
コストパフォーマンスの良さ
ウレタン防水の最大のメリットは、その初期コストが比較的安い点です。材料費が安く、施工できる職人も多いため、他の防水工法に比べてコストを抑えることができます。
また、補修やメンテナンスの際にも、表面を簡単に重ね塗りできるため、長期的なコストも軽減されます。
継ぎ目のない仕上がり
ウレタン防水は塗布型の工法で、施工後は継ぎ目のない一体化した防水層が形成されます。シート防水のように継ぎ目が原因で剥がれや雨漏りが発生する心配が少なく、均一で美しい仕上がりが期待できます。
複雑な形状にも対応
液状のウレタン樹脂を塗るため、凹凸のある場所や複雑な形状の建物でも問題なく施工できます。特に、ビルの屋上やベランダの細かい部分まで均等に塗布できるため、どのような場所でも柔軟に対応できる点が強みです。
軽量で建物に負担をかけない
ウレタン防水は塗布された後でも層の厚みが約3mm程度と薄く、他の防水工法に比べて非常に軽量です。そのため、建物全体にかかる負荷が少なく、重量による劣化を心配する必要がありません。
メンテナンスが容易
ウレタン防水の表面はトップコートで保護されており、このトップコートは5年程度で塗り直す必要があります。しかし、ウレタン防水層自体は15年程度の耐久性があり、定期的なメンテナンスを行うことで長期間の使用が可能です。
重ね塗りが可能
ウレタン防水の塗料は、経年劣化した場合でも簡単に重ね塗りができるため、シート防水のように剥がす手間が不要です。表面を高圧洗浄などで清掃すれば、そのまま新しい層を重ねて施工できるため、処分費用もかからず、エコなメンテナンスが可能です。
多用途で幅広い施工が可能
ウレタン防水は多様な場所で施工可能な汎用性の高さが魅力です。屋上やベランダに限らず、貯水槽や共用廊下など、形状や面積に関わらず適用できるため、様々な工事現場で採用されています。
ウレタン防水のデメリット
メリットが多いウレタン防水ですが、その一方で次のようなデメリットもあります。
職人の技術に左右される仕上がり
ウレタン防水は、職人が手作業で塗布する工法です。そのため、職人の技術によって防水層の厚さや均一性に差が生じることがあります。
塗装が薄い部分があると、劣化が早まったり、雨漏りのリスクが高まったりします。特に複雑な形状や立ち上がり部分で技術の差が顕著に表れることがあり、信頼できる業者に依頼することが重要です。
施工中の天候に影響を受けやすい
ウレタン防水は液状の材料を塗るため、施工中や施工前に雨が降ると乾燥に時間がかかり、工程が大幅に遅れることがあります。
雨が降ることで工事が数日延期されることもあり、工期の延長につながる可能性があります。天候の影響を受けやすい点は、事前に計画しておく必要があります。
乾燥に時間がかかる
ウレタン防水は乾燥に時間がかかるため、施工日数に余裕を持つ必要があります。特に気温や湿度が低い環境では乾燥が遅れることがあり、作業が完了するまでに日数がかかる場合もあります。このため、施工中の天候や気温に十分な考慮が必要です。
トップコートの定期的な塗り替えが必要
ウレタン防水は耐用年数が長いものの、5年から8年ごとにトップコートの塗り替えが必要です。このメンテナンスを怠ると、防水層の耐久性が低下し、結果的に防水性能に悪影響を与える可能性があります。
定期的なメンテナンスを行うことで、ウレタン防水の効果を長く維持できます。
見た目では不良箇所がわかりにくい
ウレタン防水は見た目では施工不良がわかりにくい点もデメリットです。
塗装のムラや手抜き作業が表面からは判断しづらいため、施工後すぐに不具合が発生することがあります。
ウレタン防水工事の流れと工法別費用相場
最後に、ウレタン防水工事の流れと施工にかかる費用の相場を工法別にご紹介していきます。
密着工法
高圧洗浄
高圧洗浄機で下地表面の汚れやホコリを除去します。
ケレン・清掃
ケレン作業で下地に残ったゴミや不要な防水層を取り除き、清掃します。
下地処理
下地にひび割れがある場合は補修し、表面を平らにします。凹凸が残っていると、防水層が均一にならないことがあります。
改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を集め、樋に流すためのドレンを設置します。
プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材をしっかり密着させるために、プライマーを塗布します。
パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペット立ち上がり部分は漏水リスクが高いので、丁寧にウレタン防水を施します。
ウレタン塗膜下塗り
一層目のウレタン塗膜を適切な厚さで塗布します。
ウレタン塗膜中塗り
二層目のウレタン塗膜を塗布します。中塗り工程を飛ばすと防水性能が低下する可能性があるため注意が必要です。
トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐため、保護塗料を塗布します。これにより紫外線から防水層を守ります。
完成
工程が少なく、施工期間は3日から5日程度で完了します。
【費用相場】約4,000円~6,000円/㎡
メッシュ工法
高圧洗浄
高圧洗浄機を使い、下地表面の汚れやホコリを高圧の水で除去します。
ケレン・清掃
ケレン作業で下地に残ったゴミや不要な防水層を取り除き、表面をきれいに整えます。
下地処理
ひび割れやクラックを補修し、凹凸がある場合は平らに処理します。下地の状態を整えることで、防水層の密着性を向上させます。
改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を効率よく樋に流すため、改修用ドレンを設置します。
プライマー(接着剤)塗布
下地と防水材をしっかり密着させるために、プライマーを塗布します。プライマーの塗布が不十分だと、防水性能に影響が出るため注意が必要です。
メッシュシート貼り付け
ウレタン塗膜を塗布する部分に、メッシュシートをしっかりと貼り付けます。これにより、防水層の強度が増します。
パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペットの立ち上がり部分は漏水リスクが高いため、慎重にウレタン防水を施工します。
ウレタン塗膜下塗り
一層目のウレタン塗膜を適切な厚さで塗布します。この層が防水の基盤となります。
ウレタン塗膜中塗り
二層目のウレタン塗膜を重ねて塗布し、さらなる防水効果を高めます。
トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐため、保護塗料であるトップコートを塗布します。これにより、紫外線や外部環境から防水層を守ります。
完成
メッシュ工法の施工は、通常3日から5日ほどで完了します。
【費用相場】約4,500円~6,500円/㎡
通気緩衝工法
高圧洗浄
高圧洗浄機を使用し、下地表面の汚れやホコリを高圧の水で一気に吹き飛ばします。
ケレン・清掃
ケレン作業で、下地に付着したゴミや不要な防水層を丁寧に取り除き、平坦にします。
下地処理
ひび割れやクラックを補修し、下地を平らに整えます。既存が保護コンクリートの場合は目地を撤去します。
プライマー(接着剤)塗布
防水材をしっかり密着させるために、プライマーを下地に塗布します。
通気緩衝シート貼り付け
下地に含んだ水分を逃がすためのシートを貼り付け、ローラーでしっかりと転圧します。
ジョイントテープ貼り付け
シートのつなぎ目をなくすため、ジョイント部分にテープを貼り付けてシームレスに仕上げます。
改修用ドレンの設置
防水層で受けた雨水を効率よく排水するため、改修用ドレンを設置します。
脱気筒の取り付け
下地に含んだ水分を、通気緩衝シートを介して脱気筒から外部に排出させます。脱気筒は50㎡~100㎡に1本の割合で設置します。
パラペット立ち上がりウレタン防水
パラペットの立ち上がり部分にウレタン防水を施し、特に入隅部分には丁寧な作業が必要です。
ウレタン防水1層目塗布
1層目のウレタン塗膜を塗布し、適切な厚さに仕上げます。
ウレタン防水2層目塗布
2層目のウレタン塗膜を塗布し、防水性をさらに高めます。
トップコート塗布
ウレタン塗膜の劣化を防ぐため、保護塗料であるトップコートを塗布します。
完成
通気緩衝工法の施工は、通常5日から7日ほどで完了します。
【費用相場】約5,500円~7,000円/㎡
まとめ
ウレタン防水は、柔軟性があり、複雑な形状の建物にも適応できる防水工法です。
優れた防水性能を誇りますが、耐用年数や費用を理解し、適切なタイミングで施工を行うことが重要です。また、長期的に防水効果を維持するためには、定期的なメンテナンスも欠かせません。
水防人では、全国47都道府県の防水職人スペシャリストを紹介しています。防水工事についてお悩みの方や、ウレタン防水工事を検討されている方は、ぜひ水防人へご相談ください。