マンションの防水は何年おきに行うべき?耐用年数も解説
2024/08/22
マンションの長期的な維持管理において、屋上の防水工事は避けて通れない重要な項目です。しかし、防水層は年月とともに劣化していき、そのまま放置すると雨漏りや建物の寿命に影響を与えることがあります。
そこで、防水工事を定期的に行うことが求められますが、そのタイミングや方法は工法によって異なります。
この記事では、マンションの屋上防水工事をどのタイミングで行うべきか、また各工法の耐用年数や費用について詳しく解説していきます。マンションの防水工事についてお悩みの方や防水工事を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
マンションの屋上防水工事は10~12年おきが目安
防水工事の種類によって耐用年数は異なりますが、耐用年数内だからといって必ずしも安心できるわけではありません。
建物がある場所や気候の影響で、防水効果が変わることがあるためです。そのため、定期的に点検し、不具合がないか確認することが重要です。
次の章では、防水工事の種類ごとの耐用年数と費用の目安をご紹介します。
防水工事の種類別耐用年数と費用相場
防水工事の種類ごとの耐用年数と費用相場は以下の通りです。
ウレタン防水
■耐用年数8年~10年
ウレタン防水工事は、ポリウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する方法で、複雑な形状の場所にも対応可能です。3つの工法があります。
【密着工法】
下地と防水層を直接密着させる方法で、既存の防水層が良好な場合に適しています。費用は約4,000円から6,000円/㎡です。
【メッシュ工法】
主に立ち上がり部分に用いられ、防水層を強化しますが、最近ではあまり採用されていません。費用は約4,500円から6,500円/㎡です。
【通気緩衝工法】
通気シートを挟み、蒸気を逃がすことで防水層の膨れを防ぎます。高い耐久性があり、特に雨漏りが発生している場所に適しています。費用は約5,500円から7,000円/㎡です。
シート防水
■耐用年数10年~12年
ビシート防水工事は、シートを使用して防水層を形成する方法で、2つの工法があります。
【密着工法】
シートを下地に密着させる方法で、施工が簡単で低コストです。費用は約4,000円から6,000円/㎡です。
【機械固定工法】
シートを鋼板で固定し、躯体の影響を受けにくい工法です。特に改修工事に適しており、費用は約5,500円から7,000円/㎡です。
アスファルト防水
■耐用年数:15年~25年
アスファルト防水工事は、アスファルトを溶かし専用の防水シートを重ねて施工する伝統的な方法で、信頼性が高いです。3つの工法があり、各工法の特徴と費用相場は以下の通りです。
【熱工法】
アスファルトを高温で溶かし、シートを重ねる方法で、耐久性が高いが異臭と煙が発生することがあります。費用は約6,000円から8,000円/㎡です。
【トーチ工法】
トーチバーナーでシートを溶かし施工する現在主流の方法で、高い技術が求められます。費用は約6,500円から8,000円/㎡です。
【常温工法】
熱を使わずに施工する環境に優しい方法で、密集地での施工に適していますが、重量が増すため建物の耐久性に配慮が必要です。費用は約5,500円から7,500円/㎡です。
FRP防水
■耐用年数:10年~15年
FRP防水工事は、ガラス繊維を混ぜたプラスチック樹脂を使用する方法で、高い防水性と耐荷重性を持つ軽量な防水層を形成します。ただし、広い面積には適していません。費用は約4,000円から7,500円/㎡です。
また、どの防水工事でも、別途足場設置や下地処理費用がかかりますので、複数業者から見積もりを取ることをおすすめします。
マンションの屋上に現れる劣化症状
マンションの屋上防水工事は、通常10年から12年を目安に行われますが、以下のような劣化症状が見られた場合は、早めの対応が必要です。
表面の色あせ
屋上表面の色が褪せてきた場合、防水機能が低下しているサインです。紫外線などの外的要因が防水層にダメージを与えています。緊急性は低めですが、早めの工事を検討しましょう。
ひび割れ
防水層にひび割れが生じることがあります。これは、外的要因や資材の寿命が原因です。ひび割れから雨水が侵入するリスクがあるため、防水工事を検討してください。特に、防水層がアスファルトの場合は早めの工事が必要です。
排水口周りにゴミが溜まっている
排水溝にゴミが溜まっている場合、防水機能が低下しています。
防水工事の際に排水溝にも防水処理が施されますが、劣化すると水が流れにくくなり、ゴミが溜まりやすくなります。定期的な掃除で対応できますが、面倒であれば防水工事を検討するのも一つの方法です。
水たまり
防水層が水に長時間さらされると、防水効果が低下します。
排水溝の周辺を掃除しても水が溜まるようであれば、防水層の改修が必要です。施工時の設計ミスの可能性もあるので、業者に相談することをおすすめします。
雑草・コケ・藻が生えている
屋上に雑草や苔、藻が生えている場合、その部分の防水効果が低下し、水分を含んでいる可能性があります。早めに対応が必要ですが、雑草を抜くと防水層に穴が開く恐れがあるため、専門業者に依頼して調査を行いましょう。
雨漏り
すでに雨漏りが発生している場合は、即時対応が必要です。雨漏りの修理と同時に防水工事を行い、さらなる水の侵入を防ぎましょう。
防水層の膨らみ
防水層が膨らんでいる場合、内部に染み込んだ水分が太陽熱で蒸発し、水蒸気となって膨らみを引き起こしています。この状態では防水層に負荷がかかり、破損するリスクが高まります。膨らみが確認された場合、全面改修が一般的です。
マンションの防水工事を怠ると起こり得るリスク
マンションの屋上は、日々の紫外線や風雨によるダメージを直接受けており、そのため防水工事が非常に重要です。しかし、定期的なメンテナンスを怠ると、屋上の防水効果が徐々に失われ、さまざまな問題が発生する可能性があります。ここでは、防水工事を行わないことで生じるリスクと、その対策についてご紹介します。
雨漏りの発生
マンションの屋上で防水工事を行わないと、雨水が直接建物内部に浸透し、雨漏りが発生します。この雨漏りは建物の耐久性を大幅に低下させ、住民の生活にも悪影響を及ぼすことがあります。雨が降るたびに浸水が進み、修繕が必要な範囲も広がってしまいます。
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鉄筋コンクリートの劣化
防水効果が失われた屋上から浸透した雨水は、建物の鉄筋コンクリート部分にもダメージを与えます。
鉄筋が錆びることで、マンションの強度が著しく低下し、建物全体の安全性が脅かされます。この状態が続くと、構造そのものが危険な状態になり、修繕費用も大幅に増加します。
資産価値の低下
雨漏りや構造の劣化が進むと、マンションの資産価値は大幅に低下します。これにより、物件の売却が難しくなったり、価格が下がったりする可能性があります。
また、修繕費用が増えることで、マンションの住民全体の負担も増大します。
これらのリスクを防ぐためには、定期的に防水工事を行い、屋上の防水機能を維持することが不可欠です。
適切なメンテナンスを行うことで、建物の安全性や資産価値を守り、将来的な修繕費用を抑えることができます。
マンションの屋上防水工事を行う際の注意点
屋上防水工事を行う際には、予期しないトラブルを避けるために以下の注意点を確認しておきましょう。
工事期間中の悪臭と騒音
屋上防水工事では、悪臭や騒音が発生しやすく、居住者や近隣住民からのクレームにつながることがあります。特に、ウレタン防水ではシンナー臭、アスファルト防水ではアスファルトが焼ける臭いが発生します。
また、塗料の塗布中には騒音は少ないですが、劣化した防水シートを剥がす際などには大きな音が出ることもあります。
工事を依頼する際には、施工業者に悪臭や騒音の程度について確認し、居住者や近隣住民への配慮を忘れないようにしましょう。
追加工事の発生
工事開始後に追加工事を勧められることがあります。これは、工事前に十分な現地調査が行われなかったためです。
劣化が予想以上に進んでいたり、予定通りの工事では不十分と判断された場合、追加工事が発生し、当初の見積もりよりも費用が増えることがあります。
また、施工業者から「ついでにこちらもやっておきましょう」と提案されることもあります。即決せずに、追加費用や同時に行うメリットを確認し、納得したうえで決定しましょう。
工期の遅延
屋上防水工事は天候に大きく影響されます。
雨天時には、下地補修ができなかったり、塗料が硬化不良を起こしたり、湿気で塗膜が浮いたり剥がれたりする可能性があります。そのため、工事スケジュールは天気予報を参考に調整しますが、予期しない雨天が続くこともあります。
無理に工事を進めると、防水性能が不十分になったり、耐久性が低下したりすることがあります。計画通りに工事を終えることがむずかしい場合もあることを理解しておきましょう。
保証内容の認識の違い
屋上防水工事を依頼する前に、保証内容についてしっかり理解しておくことが重要です。
メーカー保証は、指定された工法でのみ適用されることが多いです。予算を抑えるために工程を省くなどのイレギュラーな工事は、メーカー保証が受けられない可能性があります。
保証の対象となる不具合やメーカー保証の有無についても十分に確認しておきましょう。
また、メーカー保証以外にも独自の保証制度を設けている会社もあります。施工会社を選ぶ際には、工事内容や費用だけでなく、保証内容もしっかり比較して満足度の高い選択をしましょう。
まとめ
マンションの屋上防水工事は、長期的な建物の保護において重要です。防水層の劣化を放置すると、雨漏りや建物寿命に影響を及ぼす恐れがあります。
適切なタイミングで工事を行い、各工法の耐用年数や費用を理解することが大切です。
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