FRP防水とはどんな工事?特徴やメリット・デメリットを解説
2024/10/22
FRP防水は、住宅や建物の防水工事において広く使われる工法の一つです。
強度や耐久性に優れた素材を使用した防水技術で、軽量でありながら高い防水性を持つのが特徴です。しかし、どの建物にも適しているわけではありません。
この記事では、FRP防水のメリットとデメリットをご紹介します。FRP防水の特徴や工事の流れ、費用相場についてくわしく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
FRP防水とは
FRPとは、「繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)」の略称で、ガラス繊維を組み合わせたプラスチック樹脂のことを指します。
防水工事で使用されるFRPは、軽量でありながら強度や耐久性が非常に高いのが特徴です。この素材は防水だけでなく、バスタブや自転車のフレーム、ロケットなどでも使われるほど、優れた性能を持っています。
FRP防水工事は、木やコンクリートの上にFRPを敷き、樹脂を塗り固めることで防水層を形成します。仕上げに紫外線から保護するため、トップコートを塗布するのが一般的です。
FRP防水が適用される建物
FRP防水は、その高い強度と耐久性から、鉄骨造やコンクリート造の建物に適しています。
FRPは伸縮性がほとんどないため、建物が大きく変形しない環境で効果を発揮します。特に、強風や地震の際に変形が少ない構造には最適です。
また、漏水が問題になる貯水槽やプール、浴槽などにも使用され、屋上が駐車場として利用されるショッピングセンターや屋上緑化でも活用されています。軽量でありながら、耐久性に優れたFRP防水は、ベランダなどの防水工事にも広く採用されています。
FRP防水が不向きなケース
広く使われることが多い一方で、FRP防水には不向きなケースもあります。
FRPは伸縮性がほとんどないため、建物の揺れや変形が大きい場所には適していません。例えば、地震や強風の影響を受けやすい木造住宅で、特に広いベランダやバルコニーの場合、FRP防水がひび割れたり、下地から浮いてしまう可能性があります。
また、FRP自体が割れることはなくても、壁や床との間に隙間ができてしまうこともあります。このような点を考慮し、施工場所を選ぶことが大切です。
FRP防水のメリット
ここからは、FRP防水のメリットについてご紹介します。FRP防水のメリットとして、主に以下の4つが挙げられます。
・高い水密性(防水性)
・非常に丈夫で耐久性が高い
・軽量で建物への負担が少ない
・工期が短い
それぞれについて、くわしく見ていきましょう。
高い水密性(防水性)
FRP防水は、風呂の浴槽やプール、さらには宇宙ロケットなど、非常に厳しい防水性能が求められる場面でも使用される素材です。この防水工法では、継ぎ目のない一体化した防水層を形成するため、水が入り込むことがほとんどありません。
他の防水工法と比較してもFRPは非常に高い「水密性」を誇り、雨漏りなどの心配が少ないのが大きな強みです。そのため、ベランダや屋上など、雨や湿気の影響を受けやすい部分で安心して使用できます。
非常に丈夫で耐久性が高い
FRP防水のもう一つの大きなメリットは、耐久性と強度です。
繊維強化プラスチックを使用しているため、FRP防水は硬くて非常に丈夫な仕上がりになります。耐摩擦性や耐荷重性にも優れており、人が歩いたり、自動車が走行するような場所でも問題なく使用できます。
例えば、屋上が駐車場として利用される大型商業施設や、屋上緑化を施している建物でも、FRP防水がしっかり機能します。この強度は、長期にわたりメンテナンスの負担を軽減するため、建物全体の寿命を延ばす効果も期待できます。
軽量で建物への負担が少ない
FRP防水は1平方メートルあたり約4kgと、他の防水工法に比べて非常に軽量です。この軽さは、築年数が経過した住宅や、重量負荷に耐えにくい建物にとって大きなメリットです。
重さが少ないため、構造上の影響を最小限に抑えることができるのです。特にベランダや屋上の防水工事では、この軽量性が際立ち、施工場所の選択肢を広げてくれます。また、軽量であることは工事の際の扱いやすさにもつながり、作業の効率化にも貢献します。
工期が短い
FRP防水は、他の防水工法と比べて工期が非常に短いのも魅力の一つです。
樹脂の硬化時間が短く、特に「トップコート」と呼ばれる保護層の乾燥時間も数時間で完了します。そのため、塗り重ねる工程があっても、通常1~2日で作業が終了します。
このスピード感は、施工場所を長期間使用できなくなる心配が少なく、住人や施設利用者にとって大きなメリットとなります。また、工事の手早さはコスト削減にもつながり、経済的にも効果的です。
FRP防水のデメリット
メリットが大きいFRP防水ですが、その一方で次のようなデメリットもあります。
費用がやや高め
FRP防水は非常に優れた防水性や耐久性を持つ一方で、他の防水工法に比べて施工費用やメンテナンス費用が高いというデメリットがあります。
ウレタン防水やシート防水に比べ、FRP防水は材料自体のコストや、施工技術が求められるため、費用が高くなる傾向があります。特に、広い面積をカバーする場合には、このコスト差が顕著になることがあり、初期費用の負担を考慮する必要があります。
ただし、耐久性が高く、メンテナンス頻度が少なくて済むことを考慮すると、長期的にはコストパフォーマンスが向上する可能性もあります。
施工場所の制限
FRP防水は伸縮性が少ないため、施工場所に制限がある点もデメリットです。
特に木造建築や広い面積の床面(目安として10㎡以上)には施工が難しいとされています。
木造建築は熱や湿度によって伸縮することが多く、その影響でFRP防水層が割れたり、剥がれたりするリスクがあります。このため、木造住宅のベランダやバルコニーなどの施工には不向きです。
また、FRPの特性上、下地が十分に強固でない場合や、歪みやすい場所ではひび割れが発生しやすいため、事前に施工場所の適性を十分に確認することが重要です。
施工時に臭いが発生する
FRP防水の施工中には、樹脂の硬化過程で独特の刺激臭が発生します。この臭いはポリエステル樹脂の化学反応によるもので、ベランダやバルコニーなど住宅内に近い場所での施工時には特に気になることがあります。
施工中は窓を閉めるなどの対策が必要ですが、乾燥後には臭いは消えるため、長期的な問題にはなりません。しかし、施工中の臭気は短期間であっても住人にとって不快な経験となることがあるため、あらかじめ理解しておくべきデメリットです。
紫外線への弱さ
FRP防水は、紫外線に弱いという性質があります。このため、直接日光にさらされる場所では、紫外線による劣化を防ぐために、定期的なトップコートの塗り替えが必要となります。
トップコートが劣化すると、防水機能が損なわれる可能性があるため、メンテナンスの頻度が増え、結果的に追加のコストが発生することになります。防水性能自体は高いものの、この紫外線対策を怠ると、FRP防水の寿命を短くしてしまうことにもなりかねません。
FRP防水工事の流れと費用相場
最後に、FRP防水工事の流れと施工にかかる費用の相場をご紹介していきます。
1.高圧洗浄
まずは高圧洗浄機を使用して、下地表面の汚れやほこりをしっかりと洗い流します。これにより、次の工程で使用する防水材料がしっかりと密着する準備を整えます。
2.ケレン・清掃
ケレン作業では、下地に残ったゴミや古い防水層、不要な塗膜を削り落とし、さらに清掃を行って下地を整えます。これにより、防水施工がしやすくなります。
3.下地処理
ひび割れやクラックが見られる場合は、丁寧に補修し、凹凸のある箇所は平らになるように処理します。下地がしっかりしていることが、FRP防水の耐久性に直結します。
4.改修用ドレンの設置
雨水を排出するための改修用ドレンを設置します。この工程が不十分だと、雨水が溜まりやすくなり、防水効果が低下する可能性があります。
5.プライマー(接着剤)塗布
下地とFRP防水材の密着度を高めるため、プライマーを塗布します。これにより、FRPの防水層がしっかりと下地に密着し、剥がれにくくなります。
6.ガラスマット貼りと一層目の樹脂塗布
FRP防水専用のガラスマットを下地に貼り付け、その上からFRP樹脂を塗布します。この工程で防水層を形成し、耐久性を持たせます。
7.中塗り(二層目)
余分なガラスマットを削り、次に中塗りを施します。これにより、さらに強固な防水層が形成されます。この工程を省略する業者もいますが、手抜き工事にならないよう注意が必要です。
8.トップコート塗布
FRP防水層の劣化を防ぐために、保護塗料であるトップコートを塗布します。これにより、紫外線や風雨から防水層を守り、長持ちさせる効果があります。
9.完了
塗膜の乾燥を待つ時間が少ないため、FRP防水工事は2日~3日ほどで完了します。
【費用相場】約6,000円~8,000円/㎡
まとめ
FRP防水は、優れた防水性能と耐久性を備えた工法ですが、適切な施工と定期的なメンテナンスが重要です。特に、費用や施工箇所の制限を理解し、長期的な視点でメンテナンス計画を立てることが建物を守る鍵となります。
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